もうこのままでは生きていけない

37歳。女。主人は20歳年上。東洋の占い勉強中。

こうして信心深くなっていくわけ

2日目 10:30 国立公園内にある展望台

美しい海岸線を一望する展望台へ。

カフェもあり、映えスポットもあるらしい。

森の中、石が敷き詰められた、きれいに整備されたハイキングコースを歩いてみることに。

かなりの暑さだが、木陰に入ると涼しい。

看板には公園内の植物や、生息する動物の説明。

先ほど得たウグイスに関する知識がそのまま載っており、

イムリーさに喜ぶわたし。

 

彼はずっと足元に目をやっている。

「それはともかくさ、この実はなんなんやろうね?」

道を覆い隠すほどに、びっしりと落ちている、

赤いまん丸の木の実。

「これは、えーと、コケモモ?いや、なんやっけ?」

「なになに~?気になるなあ」

本当に気になる様子の彼。

こういう風に追求グセが出るのは大体わたしなのだが、

この実のなにがそんなに琴線にふれるのかしら。

「なんだろうなあ~なんかそんなの調べるアプリとかないのかなあ、写真撮ったら分かるみたいな…」

「あ~、あるね」

「あるの!?やって!なに~、あるの!言ってよ~」

どうしたのかしら、えらく本気だなあ。

ていうかアプリダウンロードするの面倒くさいなあ。

しぶしぶ検索するわたし。

「えーと、こういうやつかな?」

「とってとって!」

「うーん、でも無料のがないなあ~、30日後から料金発生しちゃう、」

「また解約して!とりあえずとって!」

無類のケチの私は腰が引けているのだが、あまりに彼が本気なのでダウンロード開始。

 

「わ~、そんなアプリあるんだなあ、やった~」

「あるけどさあ、そんなに…」

「楽しみだなあ、食べられるのかなあ」

「なに?食べたいから調べたいの!?」

「食べたーい!」

わたしが呆気にとられているところでダウンロード完了。

「食べ、食べたい…」

なおも何て言ったものか私が戸惑っていると、

二人の前方の木から、新しくポトリと一つ落ちてきた。

「きたきたきた!」

喜び勇んで拾い上げる彼。

「さあ!調べて!」

カメラで撮ると、あっという間に検索結果が表示される。

『ヤマモモ』

 

「すごーい。ヤマモモやって~、『梅雨頃に暗赤色の果実がなり、食べられますが日持ちが悪いため市場には流通せず、ジャムなどに加工して…』」

「食べられるんや!いくよ、いくよ、」

「えー、ほんとに食べるの?こわくない?」

彼はそーっと一口かじる。

「・・・うまーい!!!」

「えー?!」

「めっちゃおいしい!うまい!」

彼はゲラゲラ笑っている。差し出されて私も恐る恐る一口かじってみる。

「・・・うまい!!!」

それはそれは甘くて、ほとんど酸味もなくて、めっちゃジューシーで、なんじゃこりゃ、最近食べたフルーツの中で一番おいしいんですけど、

「なにこれ!めっちゃおいしいやん!」

「めっちゃおいしい!」

「ていうかさ、すごいタイミングで新しい実が落ちてきたよね。さすがに道に落ちとるのは食べれやんもんね」

「ほんとほんと、どうぞ~って感じやったよね」

「うま~」

「うま~。アプリすげ~」

「すげ~。うま~」

笑いが止まらなくなって、二人とも足がガクガクしながらハイキングコースを下っていく。

それからは景色そっちのけでアプリで遊びまくり。

「この花、すごいいい匂いがするって書いてあるよ!」

「ほんとや!すげー!」

「すげー!」

 

13:00 早々と帰路へ 途中の道の駅でお昼を買い込んでいく

15:00 帰宅 帰宅即遅いお昼ご飯 お昼ご飯即昼寝

19:00 ダラダラとテレビを見る

旅行中の活動時間短すぎるよね、寝すぎだよね、帰ってくるの早すぎるよね、と言いあいながらなんとなくクイズ番組を見る。

『問題です、この鳴き声はどちらでしょう』

『ホーー、ホケキョッ』

『A、ウグイス B、ホトトギス

「あーー!」

噓みたいな偶然に支配された、自然との触れ合いたっぷりのこの旅行、

やはり出発前の参拝の効果だと思っています。

神様どうもありがとう。