こうして信心深くなっていくわけ
2日目 10:30 国立公園内にある展望台
美しい海岸線を一望する展望台へ。
カフェもあり、映えスポットもあるらしい。
森の中、石が敷き詰められた、きれいに整備されたハイキングコースを歩いてみることに。
かなりの暑さだが、木陰に入ると涼しい。
看板には公園内の植物や、生息する動物の説明。
先ほど得たウグイスに関する知識がそのまま載っており、
タイムリーさに喜ぶわたし。
彼はずっと足元に目をやっている。
「それはともかくさ、この実はなんなんやろうね?」
道を覆い隠すほどに、びっしりと落ちている、
赤いまん丸の木の実。
「これは、えーと、コケモモ?いや、なんやっけ?」
「なになに~?気になるなあ」
本当に気になる様子の彼。
こういう風に追求グセが出るのは大体わたしなのだが、
この実のなにがそんなに琴線にふれるのかしら。
「なんだろうなあ~なんかそんなの調べるアプリとかないのかなあ、写真撮ったら分かるみたいな…」
「あ~、あるね」
「あるの!?やって!なに~、あるの!言ってよ~」
どうしたのかしら、えらく本気だなあ。
ていうかアプリダウンロードするの面倒くさいなあ。
しぶしぶ検索するわたし。
「えーと、こういうやつかな?」
「とってとって!」
「うーん、でも無料のがないなあ~、30日後から料金発生しちゃう、」
「また解約して!とりあえずとって!」
無類のケチの私は腰が引けているのだが、あまりに彼が本気なのでダウンロード開始。
「わ~、そんなアプリあるんだなあ、やった~」
「あるけどさあ、そんなに…」
「楽しみだなあ、食べられるのかなあ」
「なに?食べたいから調べたいの!?」
「食べたーい!」
わたしが呆気にとられているところでダウンロード完了。
「食べ、食べたい…」
なおも何て言ったものか私が戸惑っていると、
二人の前方の木から、新しくポトリと一つ落ちてきた。
「きたきたきた!」
喜び勇んで拾い上げる彼。
「さあ!調べて!」
カメラで撮ると、あっという間に検索結果が表示される。
『ヤマモモ』
「すごーい。ヤマモモやって~、『梅雨頃に暗赤色の果実がなり、食べられますが日持ちが悪いため市場には流通せず、ジャムなどに加工して…』」
「食べられるんや!いくよ、いくよ、」
「えー、ほんとに食べるの?こわくない?」
彼はそーっと一口かじる。
「・・・うまーい!!!」
「えー?!」
「めっちゃおいしい!うまい!」
彼はゲラゲラ笑っている。差し出されて私も恐る恐る一口かじってみる。
「・・・うまい!!!」
それはそれは甘くて、ほとんど酸味もなくて、めっちゃジューシーで、なんじゃこりゃ、最近食べたフルーツの中で一番おいしいんですけど、
「なにこれ!めっちゃおいしいやん!」
「めっちゃおいしい!」
「ていうかさ、すごいタイミングで新しい実が落ちてきたよね。さすがに道に落ちとるのは食べれやんもんね」
「ほんとほんと、どうぞ~って感じやったよね」
「うま~」
「うま~。アプリすげ~」
「すげ~。うま~」
笑いが止まらなくなって、二人とも足がガクガクしながらハイキングコースを下っていく。
それからは景色そっちのけでアプリで遊びまくり。
「この花、すごいいい匂いがするって書いてあるよ!」
「ほんとや!すげー!」
「すげー!」
13:00 早々と帰路へ 途中の道の駅でお昼を買い込んでいく
15:00 帰宅 帰宅即遅いお昼ご飯 お昼ご飯即昼寝
19:00 ダラダラとテレビを見る
旅行中の活動時間短すぎるよね、寝すぎだよね、帰ってくるの早すぎるよね、と言いあいながらなんとなくクイズ番組を見る。
『問題です、この鳴き声はどちらでしょう』
『ホーー、ホケキョッ』
『A、ウグイス B、ホトトギス』
「あーー!」
噓みたいな偶然に支配された、自然との触れ合いたっぷりのこの旅行、
やはり出発前の参拝の効果だと思っています。
神様どうもありがとう。