もうこのままでは生きていけない

37歳。女。主人は20歳年上。東洋の占い勉強中。

動物と触れ合っているようでそうでもない

2日目 7:00

この人たちはどれだけ寝るんだろう?

前日雨で使用できなかったウッドデッキへ。

椅子がまだやや濡れているのを、彼が拭いてくれる。

その間に、わたしは部屋にあったドリップコーヒーを入れる。

外でのコーヒータイム。

雨上がりで木々はたっぷり濡れている。

遠くにわずかに見える入り江が光っている。

鳥が鳴き交わしている。

「いい気持ちやねえ」

「外はいいなあ。こういうスペースほしいなあ」

 

ホーーーーー、ホケキョッ

 

「おー。上手やなあ~。なんやっけ?」

「ウグイス?」

ホトトギス?」

「どっちだ?」

さっそく調べてみると、ウグイス。

 

鳥の鳴き声がたくさん試聴できるサイトを発見し、いろいろと聞いていく。

ホトトギスは意外と印象に残らないねえ、ハトも街のハトと山のハトは違うんやね。

かっこうはマジかっこうやね!ということは?ハト時計はかっこう時計なのでは?

これがナイチンゲールかあ~、ねえ、ここでベートーベンの6番の二楽章聴いてみよう!

外の気持ちいい空気、今日もお休みだ、まだ朝だよ。

知識欲も満たされて、なんて気分がいいの。

へー、ウグイスでも、普段の会話の時はまた違う鳴き声なんやって。

さっきのやつは、縄張りが関係するんやって。

ウグイスの鳴き声も再生していると、谷の向こう側にいたウグイスが目の前の木にやってきた。

ホーーーーーー、ホケッ、ホーーーー、ホケキョッ!

「あ~、縄張り荒らしと思われた!」

「安心して!」

 

8:00 敷地内を散歩

それほど広くない敷地内に、十数棟のログハウスが立ち並んでいる。

ぐるりと一周して、敷地の裏手の方にある坂を下る。

少し鬱蒼とした道。

下りきったところにはドッグラン。

ペットと一緒にこういうところに滞在するのも気持ちいいだろうね。

引き返して坂を上っていくと、遠くに小さな影。

痩せた子どもの野良猫だ。

道のど真ん中でじっとこちらをうかがって動かない。

私たちが進むにしたがって、じわじわ近づく距離。

子猫の緊張感が私たちに伝染する。

思わず両手をパーにして上げる二人。

「何も持ってないのよ」「害はありません」

ふいっと立ち去る子猫。

「子猫といえども、野生の緊張感があったね」

「ほんとや~、猫であれやのに、熊やったらどうなるんやろう」

「圧倒的敗北やね」

「いっそ即死させてほしいな」

 

8:30 レストランで朝食

室内には私たちだけ。

テラス席には白人さんのご家族。

お父さん、お母さん、10代の娘さん二人。

足元にはゴールデンレトリバーがお利口に寝そべっている。

たまに尻尾をパタパタと動かし、頭を少し上げて、みんなの様子をうかがっている。

ご家族の向こうには美しいプール。

休憩用のチェアには、ご家族のものと思しきタオルや、文庫本が置いてある。

「絵になるねえ」

「またお利口さんのワンちゃんやねえ」

「見てよあの穏やかな顔」

「かといって、あの猫ちゃんを飼ってはあげられないんだよね」

「運命やねえ」

「わたしを野生に返したら、あっという間にあんな顔になるよ」

「怖」

 

10:00 チェックアウト

サービスでチェキを一枚撮ってもらう。

恥ずかしくて傾いて立ってしまう二人。

大満足で出発。