サフレ
お察しの通りでござんす。
私には友達がいない。
日常的に、何の気なしに連絡を取れる友人はまったくいない。
これはもう私の不徳の致すところ。
まずそういう人間関係を築こうという努力をしていない。
始めようとも続けようともしていない。
ほんとに不徳だな。
まったく当たり前の結果が今現在のわたくしです。
でもおかげさまで、大人になって以来、
それによる不便を感じたことは全然無い。
さみしくもなんともない。
たまにちょっと自分の在り方への疑念がよぎるだけ。
しかしサウナに行き始めて、初めて友達が欲しくなった。
私はサウナ友達が欲しい。
サフレか?
サフレだ。サフレが欲しい。
サウナだけの関係。裸だけの付き合い。
思うに、私は一人遊びが上手い。
音楽を聴くのも、本を読むのも、散歩をするのも。
映画やコンサートへたまに行くのも、一人の方がいい。
だって、一緒に行った人が物音うるさい族だったり、
てんで見当外れの感想言いやがったらどうしよう?
なるべく他人を嫌いになりたくない。
心の狭さに自信があるから。
サウナもその一つだと思っていた。
いつもの一人遊びだと。
でもですね、普段ごちゃごちゃと脳内大賑わいの私も、
さすがに90℃ほどの熱っつい部屋に座していますと、
次第に頭がぼーっとしてきます。
ほんでぼーっとし尽くした所で水風呂へインするでしょ?
毒気が抜けるでしょ?
もう一回熱い部屋に入るでしょ。
なんか、ぽかーんとしてしまう。
間が持たなくて。
多分だけど、毒気と一緒にうるさい人格が抜けるんだと思う。
そして2セット目の私は、ぽつんと一人ぼっち。
1セット目から一人なんやけど。
2セット目からのぽつんとした私の哀れなこと。
何とはなしに心細くて。
そうか、うるさい人格は、わたしを守ってくれていたのだな。
なんでも先回り先回りして、わたしに様々な事を訴えかける彼女。
わたしの疑問に高速で返答する彼女。
他人さんに変な事を言う前に、会話の防波堤となってくれる彼女。
彼女が水風呂の冷たさに流れて去った後は、保護者不在のか弱きわたし。
誘拐するなら今。
邪気の抜けた私は、保護者兼話相手を失ってぽんやりと座っている。
ねえ、今日はよく寝たね。
明日はいつもの時間に起きれるかな。
だれか、わたしとしゃべってほしい。
私を半分失くしたわたしとしゃべってほしい。
サウナ室でのわたしはそんなに悪い子じゃないから。