写真
思春期ってえのは写真が苦手なもんですよね。
動画バリバリの現代のことは分かりませんが、少なくとも私の時代は。
なんとか大人になって、それなりにお付き合い出来るようになったものの、
依然として厳しい写真タイム。
「撮りますよー、はい、チー…」
ああ、どうしよう、どれぐらい笑おうかな、歯出そうかなしまおうかな、顎もうちょっと引いた方がいいかな、引きすぎかな、目決めすぎかな、ていうか全体に決めすぎかな、よく写ろうという自意識がだめよ、でもよく写ろうとしないと顔がだるんだるんなのよ、直視に堪えないのよ、
などと雑念が高速フラッシュ。
雑念の高速に合わせて体がもじもじ動いてしまう。
でも皆は数秒間びたっと決めているもんだから、
えー皆めっちゃハート強いやん、どうしようどうしよう、私だけ方針が決まってない、えっ今皆何考えてんの、なになに、ていうかもうだめだ、早く早く早く、何の間なの今何の時間なの、こんなに何人もいるのに全員黙ってる、全員写真撮られることに集中してる、ふふ、ふふ、ふふふふふ
となって最後の「ふふふふふ」だけは声に出ている。
苦しい。
そこで編み出したのがなりきりプレイ。
気心の知れた人と旅行など行くと、行く先々でその地にちなんで積極的に演じる。
開智学校では挙手する学生。
高山陣屋ではお代官様に。
雲仙の地獄では地獄で半伽思惟像。
間が持つんだよな。シャッターを切られるまで大人しく待っていられる。
そして普通の集合写真では、またもぞもぞして、なんか撮られるの待ってるのが恥ずかしくて、「おっ?およよ?」などもごもご言っている。
普通に考えたら半伽思惟像の方が恥ずかしいけどね。