もうこのままでは生きていけない

37歳。女。主人は20歳年上。東洋の占い勉強中。

だ・れ・か ルナテッィク と・め・て

ねえ、今夜の月をご覧になりまして?

 

美しい音楽にのって天から迎えが来るか、

気分よくそぞろ歩いていたら美男子に部屋に引きずり込まれるか、

どっちか起こらないとおかしくない?

おかしくないおかしくない。

何を絶世の美女前提で話進めとんのや。

 

こんな魔力のある夜に、

ただ仕事が終わって、サランラップ買って、

ホコリまみれの軽自動車に乗って家に帰るだけなの?

サランラップとホコリは自分のせいやけどさ。

 

もし私が気が狂う一歩手前やったら、月で完全にとどめをさされていたな。

なるほどルナテッィク。

狼男に同情するよ私は。

 

ああ飽きた。

なんか毎日に飽きてる。

この生き方、ブランニューデイズに対する冒涜ではないの?

なまってる。生きる力がなまってる。

疫病で、飢饉で命を落とした庶民の歴史を冒涜している。

でも飽きたんだよ。

独身生活に飽きた。

何をするのもわたし。

食べるのも、寝るのも、悩むのも、全部わたしだけ。

 

せっかく独身なら、せめてもっと独身らしいことをしないか。

なんや仕事行って、家事しとるだけやないか。

休みの日は実家の用事したり、医者行ったり、家事しとるだけやないか。

誰も家で待ってないのに。

別にその部屋へ帰らへんでもええのに。

なんでもっとぱっとしたことせえへんのや。

やるぞやるぞ。

放浪してやる。

 

来ぬはずの迎えがそこにいるような 田の土香る朧月夜は