夕方のサウナ
サウナに行くのは概ね仕事帰りなので、平日の21時以降が多い。
私の住んでいる田舎では、21時は夜遅いということになる。
全体に人もまばら、サウナ室に至っては貸切もしくは多くて3人程度。
仕事で傷ついた心と頭で、人気のない熱い部屋にじっと座っていると、
この身に受ける理不尽が熱となって迫ってくるような気がしてくる。
サウナの熱は人生の苦のメタファーなのだ。
その理不尽に耐え座っていると、汗がじわじわと滲み出てくる。
もちろんこの汗は涙のメタファーだ。
全てが限界に近づいた時、サウナ室を出て水風呂に入る。
汗は流れ、熱はすっかり引いていく。
キーーンという冷たさに霧散していく。
ふと我に返って水風呂を上がる時、私の身から厄という厄は落ちている。
かように平日夜のサウナとは孤独のかたまりだ。
昨日は休みで、こなさなければならない用事も無く、
ついフラフラと夕方16時から昭和型スーパー銭湯へ。
まあなんというマダム天国。
2、3人ずつのグループで交わされる話題の数々は、今日でなければ口に出さないことばかり。
今日買った珍しい野菜は胡麻和えにしようかな、今日はお父さんは同窓会なんさ、あんた今日は火曜日やのにどうしたん、孫を送ってきたで遅なったんさ、涼しなったなあ朝は寒いぐらいやが(×3)
テレビへの年季の入ったあいづち。
「なんでわざわざそんなことすんの?」
「まあええわさ、家族で殺し合っとるだけやでさ」
圧倒的な日常力。
気持ちいい程度に熱さを楽しみ、クールダウン程度に水を浴びる。
リフレッシュして、また家族の中へ帰っていく。
これでなくっちゃ。このゆるぎなさ。
こうして人類は命をつないできたのだな・・・。